シャトレーゼの日本酒・白馬錦ができるまで〈第2回:仕込み編〉
2024年12月3日
稲刈りが終わって精米され、酒蔵にお米が届けられると、本格的な酒造りが始まります。第2回となる今回は、仕込み編。届けられたお米がどのようにしてお酒になっていくのか、その仕込みの様子を、順を追ってご紹介します。
稲刈りまでは〈第1回:田んぼ編〉をご覧ください。
酒蔵のある長野県大町市の様子。9月から10月、肌寒くなってきた頃に酒造りが始まります。
【蒸米(むしまい)】
洗米が済んで、まず初めに取り掛かるのは、お米を蒸すこと。この蒸し上がったお米を「蒸米」と呼び、この後、麹造りに使ったり、酒母造りに使ったり、もろみ造りに使ったりと大活躍します。3つの工程で使うのですが、特に麴造りでは菌の入り具合、酒母造りでは酵母との発酵具合において、ちょうどいい水分量にしておく必要があります。炊いてしまうと必要以上にお米が水分を吸収してしまうことから、酒米は炊かずに蒸して醸造していくのです。
甑(こしき)という大きな蒸籠のようなもので蒸していきます。部屋中が蒸気でいっぱいに。
蒸し時間は秒刻み。4、3、2、1…で布の蓋をはがします。もくもくと湯気をたてる蒸米。
蒸しあがったら、すぐ隣の冷却機へ。下の紐を緩めて、一気にどさっと機械へ投入。
【製麹(せいきく):麹造り】
蒸米ができ上がったら、まずはその一部を麴造りに使用していきます。蒸米に麹菌を繫殖させてつくるのが、麴。白馬錦で使用するのは、香りの強い麴菌です。量を調整しながら、蒸米にタネ麴をふるいかけていきます。この時の水分量が多いと麴菌が蒸米の表面に散ってしまい、米の内部に入りにくくなってしまうので慎重に水分管理を進めていきます。
コンベアに流れる蒸米に、まんべんなく麴菌をふるいます。
製麹は日をまたいでの作業になりますが、大体の作業が麴室という、室温30度のお部屋で行われます。蒸し暑い中、34度から40度越えの米麹を手で扱っていきます。
1日たって硬くなったお米を手でこわしていきます。
ちなみに取材中、見知ったお顔が…と思ったら、稲刈りの時にお世話になったお米農家さん。冬の間は酒蔵でお手伝いをしているそうです。だからこそ、お酒造りに合うお米がわかるのですね!
こわしたら今度は一定の高さに盛っていく作業です。集めて盛ることで温度を高く保ちながら、乾燥させていきます。だいたい40℃に保ち乾かすと、酵素が多く出ている状態になり、すっきりした味わいの骨格ができるのだそうです。
温度を確認する杜氏。温度もそうですが、水分量や硬さ、香り、さらには味も見つつ経過を確認します。
初めはキノコのような香りの蒸米が、栗のような香りになったら麴の完成。口に含むと、まさに焼き栗のような甘みで、少し芯のあるご飯のような感じ。味の骨格を決める大事な作業です。
【酒母(しゅぼ)造り】
酒母とは、日本酒のもとのようなもので、アルコール発酵を促す酵母を大量に繫殖させた液体です。先ほどの麴やその前の蒸米、水、酵母などを使用して造ります。毎日温度をみたり、かき混ぜたり。あまり熱くなりすぎると、酵母が活発になりすぎて死んでしまうので、適温に保つのが肝心なのだそうです。
酒母室の中は、バニラやジェラートのような甘い香りでいっぱい。
日本酒の香りを決めるのが酒母造り。白馬錦にはバナナ系のものとリンゴ系のものを合わせ、完成時にその香りが半々くらいになるよう配合します。
タンクに仕込んだ酒母を長い検温器で毎日測ります。
【もろみの仕込み】
できた酒母に、はじめにご紹介した蒸米、水、そして麴を足したものがもろみです。白馬錦の仕込みは、三段仕込みと呼ばれる方法を採用。一度にすべて仕込むのではなく、3回に分けて仕込みます。1回目の仕込みを2日かけて発酵させ、倍量の米と米麹を3日目に。さらに倍量を4日目に仕込みます。
酒蔵は3階建て。中2階の床にちょうど、1階にある大きなタンクの口が出るよう設計されています。
1階からみるタンクの様子。
この期間中、かき混ぜてまんべんなく発酵するよう気を付けながら、機械で分析をしたり、もろみを口に含んだり、仕上がりを確かめながら管理をしていきます。ここでの発酵度合いの見極めも重要。ここで甘口か辛口か、つまりアルコール度合いが決まります。
アルコールの香りやお米の風味、温度を確かめながら、搾った後、どのような味になるのかを想像していきます。
甘口を造る方が辛口の醸造より難しいとのこと。それは、お米の甘さを残すために、気候を見つつ、温度が高くなりすぎないよう、さらに注意が必要になるからだそうです。
シャトレーゼの白馬錦、純米吟醸第1号のタンクです。中ではもろみがぽこぽこと水泡をたて、発酵しています。
【搾り】
最後に、搾りの工程。良い頃合いに発酵したもろみを、原酒と酒粕に分ける工程です。
使用する自動圧搾機。アコーディオンのようになっている白い部分に空気を入れ、圧縮させることによって、圧力をかけます。
タンクにホースと機械を繋ぎ、ポンプでもろみを運びます。
搾られたて出てきた原酒は、採るタイミングによって名前がつけられています。初めの段階で出てくる原酒を「あらばしり」、中間部を「中取り」、そして最後に「責め」。それぞれの味の特徴は、素人でも分かるほどに顕著。「あらばしり」は少しガス感があり、荒々しい味わい。まだ少し白く濁っています。「中取り」の段階では透明に。すっと香りのまろやかな雰囲気で飲みやすくなります。終盤の「責め」はアルコール感が強く、複雑な味わい。
原酒の香りと味をみて、完成度を確かめる杜氏。
この後、火入れや瓶詰などの工程があって、全国のシャトレーゼ・YATSUDOKIの店舗に届けられます。
最後に杜氏からみなさんへ
「今年も、毎日の食中酒として楽しんでいただけるような、澄み切った飲み口の、優しい味わいに仕上がったと思います」
目指していた味わいである、お米の優しい甘みと、雪解け水のようなすっきりした透明感。杜氏も「合格点」とする白馬錦純米吟醸を、ぜひ試してみてください。
【数量限定】白馬錦 純米吟醸
720ml 本体価格1,800円 税込1,980円
※お酒は20歳になってから。