ぶどう農家は大事な実を取ってしまう?この時期に欠かせない意外な作業
2019年7月8日
あんなに小さかったぶどうの実が少しずつ大きくなってきました。ぶどうらしくなってきたと思いませんか?
初夏に伺ったときはこちら
大事な実をなんでとっちゃうの?
摘粒(てきりゅう)とは、余計な実をはさみでとっていく作業のことです。ぶどうは一房にたくさんの実をつけるので、そのままにしておくと、すべての実が大きくなってしまいます。そうすると、互いにぶつかって実が弾け飛んでしまったり、形が悪くなってしまったりするので、はさみで余計な実をとる=摘粒を行い、きれいにバランスよく大きくなるように整えているそうです。
目安として、一房に残すのは40粒くらい、とのことですが、一房ごと一粒ずつ数えていたらとても摘粒は終わりません。熟練農家さんの感覚で、どこを切れば実がぶつからずに大きくなるか、きれいな形になるか、実が大きくなる姿を想像しながら、つぎつぎに摘粒を進めていきます。
ちなみに「ぶどう」とひとくちに言っても、食べ馴染みのあるピオーネや巨峰、人気のシャインマスカット、ワインで有名な甲州、とその品種は様々です。摘粒の際には、ぶどうの特性を考えて作業をしているそうです。
日焼けで苦労が水の泡になる?
人間も日焼け止めや帽子など、日よけが欠かせなくなるこの時期。ぶどうにとっても日の当たり過ぎはよくなく、当たり過ぎてしまうと、ぶどうも日焼けをして色が悪くなってしまうそう。
日焼けしないように、生い茂った葉が、ちょうどよい日当たりを作ってくれています。ぶどうの葉が作る日陰でぶどうを見ていたら、心地よい風が。ちょっと日陰になるだけで涼しい風に感じました。
「足」が最もよい肥料になる
ところで、農家さんから「足肥(あこい)」という言葉を初めて聞いたのですが、どんな意味だと思いますか?
「足」が「肥やし」になる。つまり「足を使って畑に行きぶどうの様子を見て、その時のぶどうに最適なことを判断して実行する、それがどんな肥料よりもぶどうのためになる」と教えてもらいました。
何か所にもある畑に毎朝足を運び、ぶどうの様子を見て、「今日はここの畑から進めよう」、「明後日は雨の予報だから、明日の午後までこうしよう」など、その時のぶどうの様子や天候に合わせ、ぶどうにとって最適な作業を進めていくそうです。
職業というより、その人の生き様
熟練の農家さんに弟子入りしている農家さんがおっしゃった言葉なのですが、「農家は、人が管理して農作物を思い通りに育てているのではなく、あくまで育つ手助けをしているだけ。ぶどうの木にはぶどうしか実らない。人ができることは、その手助け。謙虚にぶどうと向き合う姿勢が、職業というより、その人の生き様のよう」と。
ぶどうとひたむきに向き合うこと、おいしいぶどうづくりはそこから始まっているのだと思いました。
お邪魔した農家さんのぶどうはまだ実るまで時間がかかりますが、ハウス栽培のぶどうや早いものは出始めるころ。こんな風に農家さんが大切に育ててくれたぶどうを、よりおいしく味わっていただける「山梨県産ピオーネのぶどう餅」を7月中旬に発売予定です。お楽しみに。